物言わぬFPよりは物言うFPになろう、と思った理由
拙ツイートより
FPの主要な業務分野は、「ライフプランの設計、提案」であるが、それを実現させるには、「お金」だけでは解決しないだろうなあと痛感する、2019年の幕開け。
— うえまっつん@大阪のFP新入社員 (@uemat_tweet) January 4, 2019
そして、「明日は我が身」であることをしっかりと受け止めなければ。
最近、FPブログの割にはFPと関係ないものいろいろ執筆してんなあ、とは思いますが、考えていくとしっかりつながっているなあ、と思ったのでその理由をまとめます。
「ななみん」三部作(下記参照)が、特に筆者を物言うFPにさせたきっかけです。
【目次】この記事には、こんなことが書かれています。
◇◆◇おさらい:FPのおしごと~ライフプランニング~◇◆◇
FPが顧客に提案する、ライフプランニングとは、「月々の収支」「月々の資産/負債残高」から、将来の推移を予想するなどして、ライフスタイルの提案をする。というものです。
しかし、世の中を考えていく時に、それだけでは不十分であることに気づきました。
だからこそ、あえて学んでいき、発信できることは発信していきたいと思いました。
不十分1:そもそも、前提に『男女の役割意識』がついて回る
ライフプランニングを行う前提に、『男女の役割分担意識』を持っていては、時代遅れの提案をしてしまうのでは、と思うようになりました。
改めてこう考えたきっかけは、先日更新した、「モノ申す】『女性疑似体験記』から考えたこと。」がきっかけです。
モノ申す】『女性疑似体験記』から考えたこと。 - FP新入社員が教える、20代の「お金の『基礎演習』(大阪編)」
【「夫」のほうが年収が多く、「妻」の年収が少ない】
たとえば、所得税の配偶者(特別)控除、社会保険(健康保険/厚生年金)の「扶養」概念。夫婦の形が多様化していく中で、時代遅れの感がありませんか?
この制度が最も効果的に働くのは、「夫の稼ぎが嫁子どもを食わせる」みたいな家庭のモデルです。夫婦の合計年収が同じでも、内訳が異なるだけで適用になる制度が異なります。
もちろん、「夫」「妻」どちらの収入が多くても制度は適用できるので、「妻の稼ぎが夫子どもを食わせる」こともできるのですが、こうなってくると社会の目がついつい気になります。筆者も、違和感を感じながらこの一文を入力しています。
最近いろいろな方とお話していく中で、「扶養内で」働く女性の話をよく伺うのですが、これって、社会・男性が「女性」を差別していることになりませんか。
- 「配偶者控除が外れてしまうから、(働きたくても)この辺(103万円)でやめておく」
- 「健康保険の扶養はずれたくないから、(働きたくても)この辺(150万円)でやめとく」
こう言わしめる背景には、
- 男性が、働きたいといっている女性(妻)に「働くな」と言う
- または男性が言わなくても、社会が無言で、働きたいといっている女性(妻)に「働くな」と言う
そんな力関係が存在してしまうのではないでしょうか。
まとめると、この構造では、夫(男性)が相対的に妻(女性)よりも優位に立つわけです。そうすると夫は「男だから」の苦労を【社会から】(これは決して女性に非はない)押しつけられ、妻は経済的な支配を受ける―。
そう考えると、配偶者特別控除の拡張でなくて、夫婦二人の所得税は合算してあげるとか、夫婦それぞれで健康保険(協会けんぽ、組合けんぽ)に加入する場合は、お互いの保険料負担を減らす仕組みにするとか、いかがでしょうか。
そもそも事実婚だったら?
最近、「事実婚」という概念も日本で広まりつつあります。あの『逃げ恥』では、みくりと津崎さん(ひらまさ、の漢字がわからへんかった)もそうだし、最近「はあちゅう」さんと「しみけん」さんの二人もネットを賑わせています。
先ほどから事例にあげている「配偶者控除」は、民法上の結婚(婚姻関係)を前提にしているので、適用できません。
ちなみに、年金と健康保険については、「内縁の~/事実婚」関係でも、夫婦に相当する証明ができれば、扶養認定されるそうです。→参照サイト
以上を踏まえると、『お互いバリバリ働きたい』『旧姓でそのまま働きたい』となってくると、『事実婚』をとる、という提案ができるのかもしれません。(もちろん、相続など、ほかの課題があるので、慎重に判断しますが。)
さらにそもそも
そもそも、家族って、男性と女性でなくても構成できますよね。
こんなツイートがありました。
「同性婚(愛)を認めたら少子化に拍車がかかる」とか「国が滅ぶ」とか何度も書くけどナンセンス。同性婚を認めたところで異性愛者は減らないし(同性愛者は増えないし)性的指向は変わらない。ココが基本。同性婚を認めない日本で、他の国以上に少子化が止まらないのは、原因は他にあるということだ。
— 上川あや 世田谷区議会議員 (@KamikawaAya) January 4, 2019
同性カップルになると、現状では、既存制度の枠組みでは全く説明が付きません。家族のカタチは多様になっているのに、頭の堅いことを言っていてよいのですか?役人やら、アホな政治家の皆様は。それでいいのかいな、日本は。
ここまで来ると、夫婦にまつわる制度をどんな単語で説明するのか、わからなくなりますね。(Aさん、Bさんってして、性別不問にしてしまうとかですかね)
事実婚のくだり以下、は完全なる脱線ですが、「女性疑似体験記」から世の中の裏側に気づくことができた気がします。配偶者控除も社会保険の扶養も、片方がいっぱい働いて、片方がパートで働きつつ主に家を守っている、そんな前提が見え隠れしていると言うことを踏まえて、提案していかなければ、これからの時代のFPではいられないと思います。
不十分2:そもそも、お金だけではライフプランを語れない
先に挙げた「制度」のお話はあくまで社会保険や税金のお話です。だからこそFPとして理解して、発信していくことも重要だと思います。
しかしながら、今度こそ「お金だけでは語れない」ことに気づくのです。
ライフプラン云々言っている前に、「望まない妊娠」とか「(父にあたる人に逃げられて)シングルマザーになった」そんな話を伺います。そのたびにコーヒーを吹き出しそうになるほどの衝撃を受けます。
それは看過することができません。そして、それをそもそも、掘り下げていくと、「性教育」にぶち当たるのかもしれません。
これもまた、「学校では教えてくれない」事項が関わっています。本ブログの発端。「学校ではお金の話教えてくれないよね。でも、社会に出たら即知識がないと損するよね」って引っかかりから来ているので、関連性が見えてきますよね。
筆者の記事では、この辺ですよね。
スーパー大学生から元気をもらう、の巻《前編》 - FP新入社員が教える、20代の「お金の『基礎演習』(大阪編)」
スーパー大学生から元気をもらう、の巻《後編》 - FP新入社員が教える、20代の「お金の『基礎演習』(大阪編)」
「子どもがほしいんです」と言われたとします。一般にFPとして紹介できる話と言えば、「出産費用にいくらかかって、健康保険は対象外で、その分雇用保険からいくら、健康保険からいくら出ます」みたいなものです。
でも、それ以前に「妊娠に適した年代」があったり、「不妊治療」に限界があったり、そこまで踏み込まないと、「子どもがほしいんです」には返答として完璧とはいえないなあと思っています。
もう一つ言わせていただくと、所得税法には「寡婦控除」という制度があります。
適用要件は次の通りです。
2 寡婦控除の対象となる人の範囲
一般の寡婦とは、納税者本人が、原則としてその年の12月31日の現況で、次のいずれかに当てはまる人です。(注)「夫」とは、民法上の婚姻関係をいいます。
- 夫と死別し、若しくは夫と離婚した後婚姻をしていない人、又は夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族がいる人又は生計を一にする子がいる人です。この場合の子は、総所得金額等が38万円以下で、他の人の控除対象配偶者や扶養親族となっていない人に限られます。
- 夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人です。この場合は、扶養親族などの要件はありません。
3 寡婦控除(特別の寡婦)の対象となる人の範囲
一般の寡婦に該当する人が次の要件の全てを満たすときは、特別の寡婦に該当します。
- 夫と死別し又は夫と離婚した後婚姻をしていない人や夫の生死が明らかでない一定の人
- 扶養親族である子がいる人
- 合計所得金額が500万円以下であること。
これも課題がありますよね。「夫と離婚した後婚姻していない人」という要件がありますが、『未婚の一人親家庭』はどうなるんでしょうね。同じように負担を強いられているはずなのに。
これはまるで、「未婚で子どもを産むことは悪である」という前提でもあるかのよう。一方で社会を見てみると、いわゆる「授かり婚」の存在もあり、前述のように「父親に逃げられる」なんて事例もあるのです。
これも、単に制度の解説をするだけがFPの取り組みでは、不十分に思います。
冒頭に紹介した拙ツイートにも書いたとおり、ライフプランを形成するには、「お金」の要素以外に大事なことがまだまだあるなあと思いますので、今後も発信してまいります。
まとめ:物言うFPになりたいと思った瞬間
FP試験の勉強で学んだ知識だけでは、2019年のFPとして100点の提案ができないことに気づくことができました。世の中の多様性と、それに対する制度の変化をしっかりフォローしていかなければならないし、逆に世の中の制度が遅れている場合は、しっかり提言していく必要があるのではないのかなあと思います。
今後は、FPの本筋(20代のためのお金の基礎演習)を核に、読者のあなたが想う《ステキな人生》を送れるようにできるような、少し視野を広めた提案をしていけるように、修行を重ねていきたいと強く想います。